インターネットを使ううえで「IPアドレス」は、自分の居場所や利用環境を示す“住所”のような存在です。
そんなIPアドレスを自在に変更・秘匿できるのがVPN(Virtual Private Network)。
近年はプライバシー保護やセキュリティ対策の手段としても注目されています。
では、VPNを使うと具体的にIPアドレスはどう変化するのでしょうか?
本記事では、VPN接続時のIPアドレスの仕組みや変化、注意点までを詳しく解説します。
- VPNとIPアドレスの基本的な関係と仕組み
- VPN接続時にIPアドレスがどのように変化するか
- VPNを使ってIPアドレスを変更するメリット
- VPN利用時の注意点や制限事項
- 固定IPが必要な利用シーンとおすすめVPNサービス

VPNを使った場合にIPがどうなるかを解説するよ!
VPNとIPアドレスの関係の基本を知ろう!
まずは、VPNとIPアドレスの関連性についてみていきましょう。
VPNとは?どんな仕組みで動作するのか
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的な専用回線を作る技術です。
これにより、自宅や外出先からでも安全に企業ネットワークや特定のサーバーにアクセスできるようになります。
VPNを利用すると、通信内容が暗号化されるため、公共Wi-Fiのようなセキュリティが不安な環境でも安心してインターネットを利用できます。
仕組みとしては、ユーザーの端末とVPNサーバーとの間にトンネルのような経路を構築し、すべてのデータを暗号化した状態で送受信します。このとき、外部からの盗聴や改ざんのリスクを大幅に軽減できます。
VPNの基本については、以下の記事でさらに詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。


IPアドレスとは?インターネット上の住所
IPアドレス(Internet Protocol Address)は、インターネット上でデバイスを識別するための“住所”のようなものです。


通常、インターネットに接続すると、プロバイダから一意のIPアドレスが自動的に割り当てられます。
この情報には、接続地域やプロバイダ名などの情報も含まれており、アクセス元を特定される可能性もあります。
IPアドレスは「xxx.xxx.xxx.xxx」といった数値で構成され、IPv4とIPv6の2種類が存在します。
特にプライバシーや匿名性を意識するユーザーにとって、IPアドレスの取り扱いは重要なポイントです。
VPNでIPアドレスが変わる理由
VPNを使うと、実際の接続元IPアドレスの代わりに、VPNサーバーが持つIPアドレスがインターネット上で表示されます。
これは、通信がVPNサーバーを経由して行われるためです。
つまり、自分のIPアドレスを“隠す”ことができ、代わりに別の国や地域のIPアドレスを使うことも可能になります。


この仕組みにより、匿名性の向上やジオブロック(地域制限)の回避といった効果が期待できるのです。
固定IPアドレスと動的IPアドレスの違い
IPアドレスには「固定IP(Static IP)」と「動的IP(Dynamic IP)」の2種類があります。
固定IPは常に同じアドレスが割り当てられるのに対し、動的IPは接続のたびに異なるアドレスが割り当てられます。
- 固定IP
-
業務用途やサーバー運用など、安定性が求められるケースに向いています。
- 動的IP
-
一般的な家庭用インターネットでよく使われており、コストも抑えられます。
VPNサービスでも、固定IPを提供しているものと動的IPのみのものがあり、用途に応じて選ぶことが大切です。
ホワイトリストに追加されているIPでしかログインできない自社システムなどを採用している企業もあるため、仕事で使う場合には、固定IPが無難でしょう。



毎回違うIPになるのは、セキュリティには良さそうだけど実務に支障をきたすこともあるよ
VPNとグローバルIPの関係性
グローバルIPアドレスは、インターネット上で一意に識別されるアドレスのことを指します。
VPNを利用すると、実際のグローバルIPアドレスの代わりに、VPNサーバー側のグローバルIPが割り当てられる仕組みになります。
その結果、アクセス先のサイトやサービスからはVPNサーバーのIPでアクセスしているように見えるため、自分の本来の位置情報やネット環境を秘匿することが可能です。
プライバシー保護の観点からも、VPNは非常に有効な手段といえるでしょう。
VPN接続時にIPアドレスはどう変化する?
ここからは、実際にVPNに接続した場合にどんな感じでIPが変わるかについて説明していきます。
仮想IPアドレスが割り当てられる仕組み
VPN接続を行うと、ユーザーの端末にはVPNサーバーから仮想IPアドレスが割り当てられます。
これはVPNプロバイダのネットワーク内で使われるもので、インターネット上ではこの仮想IPを通じて通信が行われる仕組みです。
その結果、アクセス先のウェブサイトやアプリには、実際のIPアドレスではなく仮想IPが表示され、ユーザーの本来の位置情報は見えなくなります。
VPNを通すことで、あたかも別の地域からアクセスしているように振る舞えるということです。
たとえば、日本にいながらアメリカのIPアドレスを利用すれば、現地限定の動画配信サービスなども視聴できるようになります。
こうした柔軟性は、VPNを使う大きな利点の一つといえるでしょう。
実際のIPアドレスとの違い
実際のIPアドレス(リアルIP)は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)によって割り当てられ、物理的な住所や契約者情報と結びついています。
アクセス元の特定が容易なため、プライバシー面での懸念が残る点が特徴です。
一方、VPNを通じて付与される仮想IPアドレスは、VPN事業者が所有・管理しているものであり、ユーザーの実際の位置情報とは切り離された存在です。
そのため、外部からはどこから接続しているのかを特定しにくくなります。
このように、VPNを利用することで、オンラインでの行動がリアルIPに直接紐づくリスクを軽減できるわけです。
ただし、VPNサービスの選定においては、通信ログの保存方針や運営国の法制度なども確認しておくべき重要なポイントとなります。
VPNごとのIPアドレスの扱いの違い
VPNサービスによって、IPアドレスの扱いには違いがあります。
主な違いは以下のとおりです。
- 動的IPタイプ
-
接続のたびに異なるIPアドレスが割り当てられる。匿名性が高く、多くの一般向けVPNで採用。
- 共有IPタイプ
-
複数のユーザーで同一IPを共有する方式。トラフィックの分散や匿名性の向上が図れる。
- 固定IPタイプ
-
特定のユーザーに一つのIPを専用で割り当てる方式。業務用途やホワイトリスト登録時に便利。
利用目的に応じて、どのタイプが適しているかを見極めることが大切です。
IPアドレスが変わるタイミングとは
VPN接続を行った瞬間に、ユーザーの端末に仮想IPアドレスが割り当てられます。
このとき、元のIPアドレスはVPNトンネル内に隠され、表に出ることはありません。
また、多くのVPNでは、接続サーバーを変更した際にもIPアドレスが自動的に切り替わります。
このため、異なる国や地域のVPNサーバーに接続するたびに、新しいIPアドレスが付与されることになります。
これをうまく活用することで、地域ごとのコンテンツ制限を回避することが可能です。
IPアドレスが変わらないケース
一部のVPNでは、同じサーバーに接続する限り、同一のIPアドレスが維持される場合があります。
特に固定IPオプションを契約しているユーザーは、常に同じIPアドレスでの通信が可能です。
また、VPNの接続に失敗した場合や、キルスイッチ機能が無効になっていると、元のIPアドレスが一時的に露出するリスクもあるため注意が必要です。
IPアドレスが変わるかどうかはVPNの仕様によって異なるため、事前にサービスの詳細を確認することが重要です。
VPNでIPアドレスを変える5つのメリット
IPを変えることにメリットはあるのか気になる方も多いでしょう。
実は、IPを変えることには、さまざまなメリットが存在します。
代表的なメリットをみていきましょう。
プライバシー保護と匿名性の向上
IPアドレスは、利用者の位置情報や閲覧履歴を追跡する手がかりになります。
VPNを使えば、仮想IPアドレスが表示されるため、第三者が実際の接続元を特定するのは困難になります。
とくに以下のような行動を取る人にとって、匿名性の確保は大きな安心材料となるでしょう。
- 公共Wi-Fiでの利用が多い
- 掲示板やSNSでプライベートな話題を投稿する
- 情報収集のために複数の国のニュースサイトを閲覧する
地域制限(ジオブロック)の回避
一部の動画配信サービスやウェブサイトでは、特定の国・地域からのアクセスを制限しています(ジオブロック)。
しかし、VPNを利用すれば、任意の国のIPアドレスを使ってアクセスできるため、こういった制限を回避できるのが最大のメリット。
サービス名 | 通常アクセス | VPN利用時 |
---|---|---|
Netflix US | 日本から視聴不可 | 米国IPで視聴可能 |
BBC iPlayer | 日本から利用不可 | 英国IPで利用可 |
通信の暗号化によるセキュリティ強化
VPNでは、インターネット上の通信がすべて暗号化されます。
そのため、パスワードや個人情報を第三者に盗み見られるリスクが大幅に軽減されるということです。
とくに次のような場面では、VPNによる保護が効果を発揮します。
- カフェや空港などの公共Wi-Fiを利用する場合
- クレジットカード情報を入力するショッピングサイト
- 企業の社内データへリモートでアクセスする際
リモートアクセスでの安全な接続
テレワークの普及により、自宅から社内ネットワークへ安全に接続したいというニーズが高まっています。
VPNを活用することで、オフィスにいるのと同じように、安全な通信環境を確保できます。
社内共有ファイルや業務システムに外部からアクセスする際には、VPNによる保護が欠かせません。
VPN利用時のIPアドレスに関する注意点
IPアドレスを変えることで得られるメリットも多いですが、注意点もいくつかあります。
みていきましょう。
IPアドレスを変更しても完全匿名ではない
VPNを利用することでIPアドレスは隠れますが、それだけで完全な匿名性が保証されるわけではありません。
以下のような要素から、身元が推測される可能性もあるため注意が必要です。
- ログインしているGoogleアカウントやSNS
- Cookieやブラウザの指紋(ブラウザフィンガープリント)
- DNSリークやWebRTCリークの発生
一部サービスではVPN利用が制限される
動画配信サービスや銀行サイトなどでは、VPN経由のアクセスを検知してブロックするケースも。
とくに次のようなサービスでは、VPNを使うと正常に利用できない可能性があります。
サービス名 | VPN制限の有無 |
---|---|
Netflix | 一部VPNはブロック対象 |
Amazon Prime Video | 地域外アクセス制限あり |
金融機関(銀行・証券) | VPNアクセスに対して警告・制限されることも |
ログを保存するVPNは避けるべき
VPNの中には、ユーザーの接続ログや通信履歴を記録するものも存在します。
プライバシー重視でVPNを選ぶなら、「ノーログポリシー(ログを一切保存しない)」を明確に掲げているサービスを選ぶことが重要です。
無料VPNに多いのが、ユーザー情報を広告会社へ提供することで収益を得ているケース。これでは本末転倒になりかねません。
日本のIPアドレスが必要なケース
VPNで海外のサーバーを経由していると、日本国内向けのサービスが利用できなくなることがあります。
たとえば、以下のような場面では日本のIPアドレスが必要になるケースも。
- 日本限定の動画配信・ラジオアプリ(TVer、radiko など)
- 国内向けの銀行・決済サービス
- 地方自治体や企業のイントラネットアクセス
上記のような用途には、日本国内に拠点を持つVPNサーバーを選ぶことが必須といえるでしょう。
企業ネットワーク接続での制限
企業によっては、セキュリティポリシー上、VPN経由の接続を制限している場合があります。
また、VPNを通すことで社内システムへのアクセスログが正常に記録されないこともあるため、業務利用時には必ずIT部門と連携して設定を行う必要があります。
VPNで固定IP契約が必要なケースについて
VPNの多くは接続のたびにIPアドレスが変わる「動的IP方式」を採用していますが、特定の利用目的では「固定IPアドレス」が圧倒的に有利です。
ちなみに筆者は、固定IPを使用しています。
NordVPNの1年プランに加入し、使用しています。


金額としては、安くないですが恩恵も大きいです。
筆者の場合は、スイスのチューリッヒのサーバーで固定IPを取得し、使用しています。


スイスは、情報開示にかなり厳しい法律がある国のため、セキュリティ性が抜群です。
スイスの法律については、以下のProtonのレビュー記事で詳しく解説しているので、興味のある方はチェックしてみてください。


少し本題から外れましたが、固定IPが真価を発揮する主なシーンを見ていきましょう。
社内システムへのセキュアなアクセス
社内ネットワークや業務システムには、アクセス元のIPを限定する「IP制限」をかけている企業も多くあります。
そうした環境では、一定のIPで接続できる固定IPの活用が効果的です。
リモートワークでも安心して社内リソースにアクセスできるようになります。
アクセス制限付きサーバーへの接続
AWSやGCP、レンタルサーバーの管理画面などは、セキュリティの観点から特定のIPアドレス以外からのアクセスをブロックしているケースが一般的です。
こういった制約をクリアするには、接続元を固定できるVPNが欠かせません。
IoT機器の管理
スマート家電や監視カメラなど、常時ネットワークに接続するIoT機器は、信頼できるIPアドレスからの接続を前提として設計されていることが多いです。
動的IPではその都度設定が必要になるため、固定IPがあると運用が格段に楽になります。
利用シーン | 固定IPが必要な理由 |
---|---|
クラウド管理画面への接続 | 接続元IPをホワイトリストに登録する必要があるため |
防犯カメラの遠隔管理 | 通信先を固定することで安定した接続を維持できる |
社内システムとのVPNトンネル | 常に同じIPで通信することでセキュリティを確保 |
セキュリティ重視の業務利用
医療・金融・法務といった高セキュリティが求められる分野では、通信環境の信頼性も非常に重要です。
IPアドレスを固定しておくことで、想定外の接続を防ぎ、不正アクセスのリスクも低減されます。
運用上のトラブルも少なくなるため、安定運用を求める企業には特におすすめです。
- セキュリティ要件が厳しい業種に従事している方
- 社内・顧客向けサービスの安定運用を重視する技術担当者
- クラウドやサーバー環境を遠隔で管理しているエンジニア
おすすめのVPNサービスとIPアドレスの扱い
数多あるVPNサービスの中から、固定IP対応の有料VPNと無料オプション付きVPNに分けてご紹介します。
各サービスの強みやIPアドレスに関する特徴が一目でわかるよう比較表も用意しました。
固定IP対応のVPNサービス比較
サービス名 | 固定IPオプション | 共有IP/動的IP | 日本向け機能 |
---|---|---|---|
![]() ![]() NordVPN | 追加料金で専用IPが取得可能 | 共有IPが基本 | 日本サーバーあり、日本語サポート対応 |
![]() ![]() MillenVPN | 固定IPプランを用意 | 動的IPも選択可能 | 日本市場向けに最適化された接続 |
上記のような有料サービスは、セキュリティと信頼性の高さが魅力であり、ビジネス利用にも適しています。
無料VPNオプションの使い方
無料で利用できるVPNとしては、VPN Gateが代表的です。
学術研究目的で提供され、多くのボランティアサーバーが参加しているのが特徴といえます。
ただし、その分速度や安定性が不安定になる可能性がある点に注意が必要です。
- サーバーは全世界に散在し、複数の国のIPを試せる
- クラウド型ではなく、ボランティアによる運用で構成されている
- 固定IPは提供されないため、用途によって制限がある
有料VPN(NordVPN)の固定IPプラン
先ほど紹介しましたが、NordVPNには、米国・英国・オランダ・ドイツなどの専用固定IPオプションがあり、追加料金で利用できます。
かなり優秀なオプションであり、IP制限のある業務システムへのアクセスにも対応できるようになります。
- 専用IPは他ユーザーと共有されず、トラフィックの影響を受けにくい
- 多数の国の共有IPプランと組み合わせて、柔軟に切り替え可能
日本市場向けVPN(MillenVPN)の特徴
MillenVPNは、国内開発かつ日本語サポートを提供しており、初めてVPNを使う人にも敷居が低い設計となっています。
固定IPプランも用意されていて、クラウドサービスや企業システムとの相性も良好です。
無料VPN(VPN Gate)はどうなの?
VPN Gateは、固定IPの提供はありませんが、デモ用途・学習用途・トライアルに最適です。
使いたい国の公開サーバーを選んで接続するだけで、簡単にIPアドレスを切り替えられます。
ただし、接続の安定性や速度はボランティア提供に左右されがちですから、本番利用には不向きです。
VPNでのIPアドレス管理は目的に応じて選ぼう!
VPNを利用すると、インターネット上のIPアドレスを自由に切り替えられるため、プライバシーの保護から地域制限の回避、業務でのセキュリティ強化まで、さまざまなメリットが得られます。
ただし、IPアドレスの扱いやサービス仕様はVPNごとに異なるため、利用目的を明確にして選ぶことが大切です。
- VPNを使うと仮想IPアドレスに切り替わり、実際のIPが非公開になる
- 接続先の国によって、地域制限のあるコンテンツにもアクセス可能
- 固定IPはセキュリティや業務用途において非常に有効
- ログポリシーやVPNの信頼性も選定時の重要なポイント
- 無料VPNは用途を限定し、商用利用には有料VPNがおすすめ
オンライン上の安全性や利便性を高めるために、IPアドレスのコントロールは今後ますます重要になるでしょう。
VPNを賢く使いこなして、自分に合ったインターネット環境を手に入れてください。